菅島茂貸本

「人間と怪物の間」 物語

飛行機事故により両親を失った主人公。
奇跡的に助かった弟・裕一は両手両足がない肉塊となっていた。

親が残した屋敷に住む姉弟。
姉は動けない裕一の為に食事、生活の面倒をみる日々を送っていた。

ある日、恋人が訪ねて来て結婚を迫られるが
弟の存在を隠している姉は答えに苦悩する。

数日後、病気の弟が居ることを告白し恋人は受け入れることを約束するが、
弟の姿をみた恋人は逃げ去ってしまう。
「この弟がいる限り私は幸せにはなれない」と実感する姉。

そんなある日、外に出たい裕一は尺取虫の動きを真似して
階段を転げながらも庭に出て土の匂いと太陽を感じて笑顔になる。
しかし、それを見ていた近所の住人が化け物が居るとざわめき始める。
姉は罰として裕一を屋根小屋に入れ鍵をかけてしまう。

真夜中「シュウ、シュウ」という音で目覚めた裕一。
その正体は窓から侵入した蛇であった!
手足のない裕一は、なすすべもなく毒蛇に噛まれてしまう。
悲鳴に気づいた姉は医者を探しに病院を回るが
先生がなかなか見つからず薬だけをもらい帰ってくる。

すでに裕一の顔は腫れ上がり醜い状態になっていた。
姉はもらってきた薬を飲ませようとするが、その時ある感情が浮かんだ。

「弟はこのまま生きていても醜い姿のまま苦しみ続ける、弟も私も幸せにはなれない」
「弟さえいなければ・・・」

姉は隠し持っていた「毒」に手を伸ばす。

人間とは、怪物とは、読む者に問いかける、菅島茂の最高傑作「人間と怪物の間」

そして物語はラストのどんでん返しに・・・

感想文                       

菅島茂のストーリーは貸本漫画によくある「行き当たりばったり」の
内容ではなく、ラストまで計算された脚本、演出のしっかりした物語である。
実際この作品を読んだとき映画を観ている様な感覚に陥った。
ラストまで一気に読んでしまう程に引き込まれる。

そして、読む者の「この状況でこんな事が起きたらいやだな」を
察しているかの様に描かれている。

この作品で印象に残った場面は
「弟に毒を盛ってしまった」姉と
「自分を殺そうとした姉を疑っている」弟が
無言で視線を合わせる場面。
弟の視線に心を見すかれていると感じる姉の恐怖・・・

タイトルにスリラー劇場とあるがこの作品は
見た目のスリラーではなく心の闇を描いたスリラーではないでしょうか。

発行年は記述されていませんがストーリー中に
新聞に載った飛行機事故の日付が1966年2月、3月となっているので
1966年、昭和41年頃のようです。

「奇音」 物語

歌謡ショーに出演していた姉のひかりは
歌の途中で突然倒れそのまま息を引き取ってしまう。
そのステージを謎の男が見ていた。

3年後、姉と同じ歌手となった、まり子。
いつものように恋人の洋一とステージへ向かう。
その日のステージには、あの謎の男が観客に来ていた。
演奏後、男はまり子の楽屋へ来て自分の演奏会へこないかと誘う。
この男は前衛音楽家の赤根であった。
まり子の声が自分の音楽に必要であると告げる。

まり子と洋一は疑りながらも赤根の演奏会にやってくる。
演奏会場は人間の口や鼻の形をしたグロテスクな作りとなっていた。
演奏が始まるとお互いの体を叩き合うことでリズム音を出したり、
水槽に入ったウナギを追うことで音楽を奏でたり、
まり子達には理解できない演奏が続いた。
そして赤根の演奏が始まった。
録音機から流れたその音には人の叫びや笑い声が混ざっていて
会場の口や鼻の造形に反響して不気味な音を奏でていた。
その時まり子は聞き覚えのある声に気づく。
そう、3年前に死んだ姉の声にそっくりだと。

翌日、ステージを待つまり子は、赤根の入れた薬水を飲んで
姉と同じようにステージ上で倒れ死んでしまう。

まり子の葬式に現れた洋一は、
列席者がみんな眠らされているのに驚くが自分も眠らされてしまう。
棺桶には、まり子の死体は無かった!

死んだと思われたまり子が目をさます。
そう、あの薬により仮死状態になっていたのだ。
そこは人間を楽器に変えてしまう赤根の音楽工房であった。
姉のあかりも楽器に変えられていたのだ!

果たして、まり子も楽器に変えられてしまうのか?!

感想文

この作品では前衛音楽を題材にしていますが
菅島作品は当時の社会問題を扱ったものが多いです。

人間を楽器に変えるという発想、変造過程、その意味、
赤根の発狂じみた考えは、なぜかつじつまが合っている。
人を犠牲にしなければ・・・


菅島茂・貸本3作品の最後の作品になります。
次回予告には「双頭の少女」が描かれていますが現存は確認されていません。
「双頭」という意味では昭和43年8月発行の
小学四年生の付録「のろいの地下室」に引き継がれた気がします。

「赤い鉄獣」 物語

美術学校に通うルリ子は学校の帰り道で車(ジャガー)を売る男に出会う。
その値段はなんと1万円だった。
迷っていたが通りかかった兄と五千円で買ってしまう。

家に着き両親を呼びに行った隙に外から叫び声が。
車に戻ると犬が車の下でひかれていた。
兄はブレーキの締め忘れと軽く考えていた。
その夜、眠れないルリ子は車庫からうなり声の様な音を聞き
兄と様子を見に行くが音は静まり返っていた。
しかし二人の後ろから生きているかのようにソロリと近づく車に
ルリ子は驚き気絶してしまう。

翌日、気分転換にスケッチも兼ねてドライブに出かけた二人。
途中ドライブインに寄るがガソリンは一滴も減っていなかった。

二人でスケッチをしていると通りかかった村人が
エンジンを止めているはずの車にひかれてしまう。

兄は誰も見ていないので、このまま逃げようと車を走らせる。
しかし警察の検問があり正直に告げるが
実はこの車は今まで10人もの人を殺している指名手配車であった。

検問中、車は勝手にエンジンをかけ警察官を襲う。
車にひかれた警官はその血を吸われたかのように干からびていく。

二人は気づいた!
この車は人の血を吸い生きているバンパイヤー・カーだと!

車はカーステレオから話しかける。
「おまえたちは、うまそうだね」と。

そこから車と兄妹の死闘が始まるのであった。
兄の仕掛けた罠で岩石の下敷きになっても生きている車!
パンクさせられても襲ってくる車!

追い詰められたルリ子。
しかし、その時「車であるがための弱点」を発見する!!

感想文

菅島作品は
「赤い鉄獣」
「人間と怪物の間」
「奇音」
の順に発表されています。

その第一作目となるこの作品は
その当時、社会問題となっていた車社会について描かれている。
その便利さ故、車を優先し安全をおろそかにしてきた人間への忠告である。

徐々に車への恐怖が高まっていくストーリーは
よく考えられておりラストのアイデアには「なるほど!」と思わされた。

ちなみに菅島作品の主人公には、
兄妹、姉弟、姉妹のように兄弟愛を扱ったものが多い。

「人食いまき毛」 物語

小学生の数子ちゃんは毎日髪の手入れを忘れません。
今日も大事にブラッシング。
ある日、学校への道で友達の二郎くんは数子ちゃんの髪の毛が
風邪もないのに動いているのを見ました。
その時は「それは静電気よ」、と気にしませんでした。
数日後、数子ちゃんが貧血で倒れました。
お見舞いに行った二郎くん、亜紀ちゃんが見たものは
しわしわの顔になった数子ちゃんでした!
そう!髪の毛に、よう素を吸い取られていたのです。

感想文

小学生にしては髪の毛をとかす数子ちゃんが色っぽいです。
「人食い髪の毛」ではなく「人食いまき毛」というところが
当時の小学生の憧れだったのかも!

「みどりの悪魔」 物語

ぶどうを種ごと食べていた春男くんは盲腸で入院していました。
手術は成功したのですが変な種が出てきました。
お見舞いに来た勇くんと知子ちゃんは春男くんを見てビックリしました。
春男くんの顔や頭から芽や枝が生えていたのです!
植物人間になった春男くんは自分の体に実ったブドウを
みんなに食べさせて同じ仲間にしようとします。

感想文

「くだものがなぜおいしいか」に、はじまって
「子孫をたやさないため」まで発展する作者の論理が
的を得てすごいです。

「のろいの地下室」 物語

ある病院で双子の赤ちゃんが生まれた。
と思った瞬間、体は一つで頭が二つの赤ちゃんだった!
両方生かしたい思いで医者と両親がとった選択は
片方の頭を犬に移植する方法だった。
数年後、成長した人間のリエ子は犬人間のタケシと
遭遇する。

感想文

怖い漫画なのですが、どこかギャグに見えてしまうキャラや
動きが作者らしいです。
菅島茂は物語の中で一、二か所に「笑ってしまう」コマを
投入してくる気がします。

※※※

現在、菅島茂の貸本は入手が困難なので

比較的、出現しやすい「のろいの地下室」が

お勧めです。ストーリーもしっかりしています。

 義体奇談 「奇音・赤い鉄獣」

 2018/5/5 「株式会社まんだらけ」より

怪奇貸本奇談シリーズ04として復刻。

 「恐怖の言葉」 菅島怒

途中まで描かれていた作品。

 8ページまでしかありませんが

その後の展開が気になる構成はさすが!!

「人間と怪物の間」

「のろいの地下室」

 2021/5/5 「株式会社まんだらけ」より

怪奇貸本奇談シリーズ13として復刻。

 「悪魔がよんでる」 菅島怒  物語

交通事故で顔に大けがをした少女。

手術後に目覚めると親戚の会話を聞いてしまう。

「顔がゆがんでグロテスク病だ」

「手術が失敗してたら寺院に連れて行く」

顔に包帯を巻いたまま少女は病院から逃げ出す。

しかしたどり着いたのは、あの寺院だった!

捕まった少女は包帯をとるのだが、その顔は・・・

感想文 

少女フレンドに掲載された読み切りです。

「こわいまんが」なのですが

人間たちの偏見へも訴えてる内容となっています。

それが「赤い鉄獣」に通じるものがあると感じました。

短編ですが菅島茂らしいストーリーのしっかりした最後まで

飽きさせない「脚本」となっています。

菅沼要・雑誌

  セクシー怪獣大暴れ

■■■■■■■■■ 菅島茂(菅沼要)周辺の活動時期 ■■■■■■■■■■■■

りぼん増刊  S35 8月 黒いうずまき  菅島セイ
少女フレンド S40 5月  悪魔がよんでる 菅島怒

【貸本】
死人ぼくろ         S4?年       水上修 220円 (西たけろう?)
赤い鉄獣          S40~41年  菅島茂 220円 
人間と怪物の間 S41年         菅島茂 220円 
奇音                S41~42年  菅島茂 220円 

【エロ】※年月不明 
週刊漫画Q  S42年4月~S51年5月 菅沼要
漫画ボィン   S43年5月~S48年9月  菅沼要
マンガ旋風  S48年5月~S50年7月  菅沼要
実話旋風   S50年2月~S55年10月 菅沼要
 
【小学館】
小学五年生  S43   2月 付録 雪女のかんざし 菅原亘
小学四年生  S43  2月 付録 白ねこ少女   菅原亘
小学二年生  S43 2,3月 本編 光る目の少女  菅原亘
小学四年生  S43  3月 付録 人食いまき毛  菅島茂
小学四年生  S43  4月 付録 みどりの悪魔  菅島茂
小学二年生  S43 4,5月 付録 森のかべひめ  菅原亘
小学四年生  S43  5月 付録 こうもり少女  菅原亘
少女コミック   S43  5月 本編 ほんとうにあったこわいはなし 菅原亘 増刊号
小学四年生      S43   6月  付録  アリ人間  小畑しゅんじ
小学二年生  S43  7月 付録 なぞなぞまんがおばけじてん(のろいのくびかざり)菅原亘
少女コミック  S43 7月 本編 花をたべる少女 菅原わたる
小学四年生      S43   7月  付録  ストップ!にいちゃん 関谷ひさし
小学四年生  S43  8月 付録 のろいの地下室 菅島茂
小学二年生  S43  8月 付録 のろいのねこ  菅原亘
少女コミック S44  4月 本編 血をすう腕   菅原わたる(亘)
小学三年生  S48 10月 付録 たんてい推理クイズブック 菅原わたる
小学三年生  S49  2月 付録 なぞなぞクイズじてん   菅原わたる
 
陽光COMICS1   S63        ザ・輪廻転生 リーインカーネーション 僕は生まれ変わっている
                          菅原亘・画 世界真光文明教団広報部・編

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